定年いろは塾【Ⅱ】お宝保険(個人年金保険、終身保険等)の損しない受取り方

定年いろは塾

0.(定年を迎える時に、必ず行うべき事の一つは、現在加入している生命保険の内容を確認することです。)

  • 近年、定年退職の時期を迎えられる方の多くは、バブルを経験されており、そのころに加入した保険は、一般的にお宝保険と呼ばれる場合が多いです。 
  • お宝「個人年金保険」は大切な資産になります。生命保険に加入してから、利用することもなく、ほったらかしにしている人は、現在加入している保険内容を確認し損しない受け取り方を選択してください。
  • さらに、加入時と比べ周りの環境も変わり、本当に必要な保障内容が変わってきています。この機会にお宝「終身保険」の損しない保険内容の見直をしてください。

定年退職後の第二の人生のライフプランを立てるときに、お宝保険は大切な資産になります。この大切な資産(保険金)の受取る時、見直す時に損しない方法を紹介します。

1. 保険金を受取るときの「税金の種類」がポイント

保険金を受取る場合、保険の種類、契約内容、受取り方によって、税金の種類が異なります。税金の種類により節税対策につながります。

以下の3項目は知っておいてください。

(1)個人年金保険(据置期間5年以上)

  • 年金で受取る場合:所得税(雑所得)※1+住民税
  • 解約・減額で受取る場合:所得税(一時所得)※2+住民税

(2)終身保険

  • 解約返戻金の受取時: 所得税(一時所得)※2+住民税
  • 死亡保険金の受取時【(契約者と被保険者が本人)で(受取人が配偶者または子)】:相続税(非課税枠)※3

(3)課税方法

  • ※1:雑所得の場合: [(受取金額)ー(必要経費:保険料相当額)]に課税されます。
  • ※2:一時所得の場合:[(受取金額)ー(必要経費:保険料相当額)ー特別控除(50万円)]×1/2 に課税されます。
  • ※3:相続税の非課税枠:『500万円×法定相続人の数』以下は課税されません。超えた分が相続税の課税対象になります。相続税対策になります。

2. お宝「個人年金保険」の受取り方

👀お宝の個人年金保険を損しないで受取る方法 で、詳しく個人年金お受取り方を説明しています。併せて読んで下さい。

お宝の個人年金保険をお持ちの方は、「受取金額」ー「必要経費(保険料相当額)」=「増えた金額」が高額になっている可能性が高いです。保険期間(据置期間)満了前までに、「増えた金額」を確認し、受取り方法を検討してください。受取り方法を間違うと損をしてしまいます。

個人年金保険は、年金で受取ると:「雑所得」一括で受取ると:「一時所得」 になります。

特に注意が必要な世帯は、 (年金211万円の壁=住民税非課税世帯)の恩恵 を受けている世帯です。「雑所得」「一時所得」で計算方法が異なるため保険金を受取る場合、給与や年金等収入等の合計所得金額が、住民税非課税世帯の条件を超えてしまい、住民税課税世帯となり、健康保険料、介護保険料が増えてしまう可能性があります。

例えば、(年金で受取る場合は、「雑所得」で計算)

個人年金保険を年金で受取る場合は、雑所得になります。 計算方法は、「雑所得」 = 「総収入金額」 – 「必要経費」 で行われます。

個人年金保険の「必要経費」は、「受取った年金(年額) × 払込保険料合計額/年金受取合計額」で算出します。この「雑所得」金額が20万円を超えると、確定申告が必要となり、合計所得金額に加算されます。

例えば、お宝保険の個人年金保険の場合

年間12万円(月1万円)で30年間、利率3%で積立た場合、およそ570万円になります。掛かった経費(支払った保険料総額)12万円×30年間=360万円を引いた額の、210万円が「増えた金額」とになり、税金の対象になります。

この570万円が個人年金の原資となり、10年間にわたって受取ることになります。この10年間の利率を1%と推定すれば、毎年およそ60万円受取ることができます。

この60万円のうち、経費(支払保険料の360万円÷10年=36万円)を差し引いた、およそ24万円/年が、雑所得となり、20万円を超えてしまい、確定申告が必要になります。年金として受取る10年間、課税されることになります。

特に注意が必要な世帯は、 (年金211万円の壁=住民税非課税世帯)の恩恵 を受けている世帯です。 24万円が合計所得金額に加えられるため、住民税非課税世帯の条件を超えてしまうと、住民税課税世帯となり、国民健康保険料と介護保険料が大幅に増えてしまいます。

例えば、(一時金で受取る場合は、「一時所得」で計算)

一時金で受取る場合は、年金期間中の運用益がないため、受取り総額が多少減りますが、「雑所得」ではなく「一時所得」の扱いとなり、税負担が軽くなる可能性があります。

およそ570万円を、一括で受取る場合は、掛かった経費(支払った保険料総額等)360万円を引いた210万円から、さらに一時所得の特別控除の50万円を引いた額の、さらに半分の80万円に課税されます。課税されるのが受取った年の1回のみです。

「一時所得の特別控除額の50万円」と「残り2分の1に課税される制度」は、節税面で魅力的です。

筆者が実際に体験したもう一つの受取り方を紹介します

例えば、約600万円を5年間で受取ることができれば 毎年およそ120万円を5年で受取り、払込保険料は360万円÷5年=72万円として計算すれば

120万円―72万円=48万円 となり特別控除50万円以下となり、所得はゼロの計算になります。

保険金の受取方法で、満期前に一部解約(減額)して受取る方法、および受取時期を延長する方法などができる場合があります。少し複雑になりますが筆者は、満期日の3年前から毎年一部解約し、満期後は受取時期延長した後、2年間に分けて受取りを行い、一時所得の特別控除の50万円以下にして受取ることができました。

[一部解約(減額)または受取時期延長ができるか事前に保険会社に確認してください。】

(年金と一括、どちらの受取り方が得か)

年金で受取る場合の「雑所得」、一括で受取る場合の「一時所得」が課税所得になる場合、どちらの受取り方が得か試算してみました。

サラリーマンの現役の時など所得税が徴収されている時に受取る場合は、所得税率が高い時期を避けて、定年退職後の次の年のような、所得(収入)が少なくなり、所得税率が低くなってから受取りを開始するべきです。保険会社によっては、受取時期を延長することも可能なので、早い目に保険会社に確認してください。

【所得税・住民税で節税】

課税所得で比較するときの税率を、所得税率 5.105%(最も低い税率) 住民税率 10%(一定税率)、と仮定し、合計 15.105%で、単純にこの税率をかけて計算してみました。

年金で受取った場合:(570万円ー360万円)÷10年=課税所得が24万円 

10年間合計の税額は、21万円×15.105%×10年間=およそ32万円

一時金で受取った場合:((570万円-360万円)ー50万円)×1/2=課税所得が80万円 

初年度のみ 税額は、 80万円×15.105%×1年間= およそ12万円

その差額はおよそ24万円の差が出ます。所得税率が高ければさらに差額は大きくなります。

【国民健康保険料】

すでに退職しており、国民健康保険に加入していると、国民健康保険料は、合計所得金額に所得割額等(およそ10%以上)を掛けて計算されます。

年金で受取る場合24万円×10%=2.4万円/年 10年間で24万円高くなります。

一時金で受取ると80万円×10%=8万円 が一回支払いになります。

その差額はおよそ16万円以上の差が出ます。

税金と国民健康保険料の総額で、およそ40万円以上の差になる可能性があります。一時金の受取り方を選んだ方が、大幅な節税ができます

3. お宝「終身保険」の見直し方

人生100年時代の今、60歳の定年退職は、残り40年の第二の人生のスタート地点です。これまで加入してきた生命保険は、お宝保険の可能性もあり、第二の人生の大切な資産になります。現在加入している生命保険の「終身保険」内容を確認し、第二の人生のライフプランに適した内容に見直してみてはいかがですか。

3-1)お宝「終身保険」の予定利率の確認

最近定年を迎える方はバブル時期に人気になっていた「定期特約付終身保険」に加入している人が多いです。

低金利時代の現在、終身保険は予定利率が0.25%ほどしかないのに対し、1996年3月までに契約した終身保険は、予定利率が3.75%もありました。つまり20年以上前に契約した終身保険がある場合は、解約せず大切にとっておき、保障内容の変更を考えてください。

バブル期の1985年4月1日~1992年頃までは、予定利率が6%のものもありました。そこから徐々に利率は下がりましたが、それでも1999年3月までのものなら、予定利率は2.75%あります。まずは今加入している保険の予定利率を確認してください。

予定利率の注意点

保険の予定利率は銀行などの預金利率とは異なります。詳しく知りたい方は、👀生命保険の利率の基礎知識 の記事を合わせて読んで下さい。

3-2)付加特約の定期死亡保険と医療保険の見直し 

筆者は、55歳を過ぎたころから、お宝「終身保険」内容の見直しを行いました。

(見直し内容は)

保険料が掛け捨ての特約部分の「定期死亡保険」と「医療保険」を外し、予定利率が高い主契約の「終身死亡保険」だけにしました。特約部分を外すことで、保険料は大幅減額されました。以下に見直した内容を紹介します。本当に必要な保障内容に見直してください。

・終身死亡保険:子供も大きくなり、高額の死亡保険が必要なくなれば、保険料が掛け捨てになる付加特約部分を解約し、主契約の「終身死亡保険」のみに見直すことをお勧めします。死亡保険金額は3000万円から450万円になりましたが、終身保険で残す資産としては十分です。70歳で保険料支払いは満了になり、70歳以降に保険料が無くなるのは老後の生活負担額が減り、ゆとりある老後生活のための費用に充てることができます。

・医療保険関係:従前、付加特約で加入していた入院等の医療保険は80歳までと年齢制限があり、人生100年時代には合わないと判断し、終身医療保険に新規加入しました。新規加入の終身医療保険は、日帰り入院、日帰り手術にも適用されるなど、保障内容を充実しています。

保険見直しで特に注意すべき事

お宝保険の見直しで注意しないといけないことは、新しい保険への変更「転換」です。保障内容を見直す時、転換後の保険料が安くなるとのことで「転換」を検討される人もいますが、実は転換が行われるとき、それまで積み立ててきた、積立金「責任準備金」を、転換後の保険料に充てることで、安く見えているだけです。新たな保険の予定利率は大幅に下がっているので、決してお宝保険の終身保険部分の主契約は解約しないでください。

現在の超低金利から考えると、2000年より前に契約したものは“お宝保険”といえます。保険会社にとっては不利になるため、見直しを勧めてくる可能性がありますが、解約しないで保険内容の見直しを行ってください

4. 生命保険の見直しのための関連記事

👀人生100年時代ライフプラン作成時に重要な生命保険の見直し方と基本知識を紹介します。

👀バブル時期の保険はお宝保険です。損しないためにも保険で使われる利率を理解しよう!

5. 参考)筆者加入のお宝保険

参考に、筆者が加入しているお宝保険を紹介します。皆さんも一度加入している保険の予定利率、積立配当金の利息などを確認し、お宝保険かどうか確認してください。

特にお宝保険は大切な資産になっています。くれぐれも保険内容を見直す時、満期保険金を受取る時に損しないように注意してください。

(日本生命)ニッセイ終身保険「定期保険特約付終身保険」 1986年契約 

(2021年現在)

  •  保険料:60歳2018年(60歳)払い込み満了。
  •  終身保険金額:250万円 予定利率5.5%、傷害特約:375万円、
  •  2020年現在の積立配当金額:約60万円(適用利率4%) 

(住友生命)終身保険 平準保険料払込方式「定期保険特約付終身保険」1993年契約

(2021年現在)

  •  保険料:70歳2029年払込満了 保険料:2,144円/月
  •  終身保険金額:200万円 予定利率5.5% 

お宝保険の予定利率は、1976年~1985年は約5.0%です。1985年~1993年までの間は約5.5%です。2017年度の終身保険では予定利率が約0.75%です。日本生命の積立配当金の適用利率は4%です。現在では考えられないお宝保険ですね。

6. 定年後の「ゆとりある老後生活」を実現させるために必ず読んでほしい関連記事

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(最後まで読んでいただきありがとうございます。)


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